レポート掲載

こうしんび 2026年 ごがつ8日

令和8年度 第1回 教育喫茶

今だから知りたい STEAMのこと 社会とアートの新しい関係を学ぶ

サイアフプロジェクトルームオンライン

2026年5月23日 土曜日

目次

レポート

2026年ごがつ23日どようび 札幌市資料館 サイアフプロジェクトルームにて 令和8年度第1回教育喫茶を開催しました

教育喫茶は 教育に携わる先生や学生 アーティスト 市民が集まり 立場を超えて教育とアートの課題やこれからの学び 社会のあり方を語り合うコミュニティとして 2023年のスタート以来 隔月で開催しています

サイアフスクールは げいじゅつさいを単なる鑑賞の場ではなく 市民のみなさんと共にアートを通して発見し 体験し 学び 未来の社会を考える場として位置付けています
これに基づき教育喫茶ではこれまでSTEAM科学技術工学アート数学を横断する学びを重要なテーマのひとつに掲げ げいじゅつさいという場から何ができるのか 私たちはその課題と可能性について ミーティングやイベントを通じて対話を重ねてきました

そこで今回は 愛知県立大学准教授であり アートと社会の関係を研究されている藤原智也先生をオンラインでゲストにお迎えしました 講義では今だから知りたい STEAMのことをテーマにお話いただき 社会とアートの新しい関係について深く学ぶ機会となりました

当日のプログラム冒頭では サイアフ2027スクールディレクターの漆 崇博が サイアフスクールや教育喫茶の取り組みについて紹介しました 続いて 教育喫茶アドバイザーで中学校美術教員の佐藤 祈先生から STEAM教育に関するご自身の学びと問題意識が共有され 今回の企画へとつながった経緯が語られました

佐藤 祈先生
STEAMについて以前藤原先生のご講演をお聞きして 2つの潮流があることを知りました この2つの文脈を学び直さなければ本質的な探究はできないと大きな衝撃を受け 藤原先生に熱意をお伝えして今回のご登壇が実現しました 今日の講義を非常に楽しみにしています

藤原智也先生による特別講義

オンラインで参加する藤原先生へバトンタッチし 講義がスタートしました

藤原先生は 中学校の美術教員を務められた後 現在は愛知県立大学にて子どもの造形発達や アートを介した社会参画 教育文化政策といったマクロな視点での研究を行われています また もう1つの専門として芸術に関する認知科学を領域とされています

講義ではまず 人類の歴史や産業構造の変化から なぜSTEAMが必要とされているのかが語られました 1960年代 アメリカではスプートニクショックを背景に科学技術教育を強化するSTEM教育が推進されました しかしその後 テクノロジーだけでは社会課題に対応できないという認識から Artsを加えたSTEAMへと発展していきます
藤原先生は 人類の営みが狩猟農耕工業情報サービスへと移り変わり 現在は生命産業や創造労働の時代へ向かっていると説明します

STEAM教育にある2つの文脈

続いて STEAMという言葉について その背景にある2つの文脈が紹介されました

ひとつは 教育研究者ジョーゼットヤックマン氏による考え方です STEMに 芸術や人文科学 哲学などの一般教養であるリベラルアーツArtsを加えた枠組みで ここでのArtsは 理数系の知識を社会や生活へ接続する役割として位置付けられています

一方 世界的デザイナーであり MIT教授などを歴任したジョン前田氏は STEM to STEAMという考え方を提唱しました こちらでは 芸術やデザインの視点を科学技術分野へ取り入れる重要性が語られています

日本で広がるSTEAM教育

日本のSTEAM教育は 2017年以降経済産業省や内閣府による国の経済成長やテクノロジーの発展の文脈から広がっていきました 理数系STEMの知識を社会実装するために 人間中心の視点Artsを持った人材が必要だという文脈で導入が進んだため 図工美術の時間を増やすというよりは 高校の総合的な探究の時間などで教科横断プロジェクトを進めるためのスローガンとして扱われているのが現状です こうした背景から 藤原先生は 現在の日本のSTEAM教育には ヤックマン的な考え方の影響が大きいと指摘されました

具体例として 多くの学校現場でアートをどう組み込むか模索する中で ロボット工作をした後に 図画工作で飾り付けをするお化粧としてのデザインといった アートが単なる装飾に留まるアプローチではなく 問いを生み出し社会と技術をつなぐ役割としてのアートをいかに組み込むか その重要性が言及されました

アートとイノベーションの関係

続けて藤原先生より スティーブジョブズをはじめ 多くのイノベーターたちが大学で芸術やデザインを学んでいた事例が紹介されました

米国の教育研究機関によるSTEAMの定義では 理数工学分野と芸術を融合させつつ 創造性批判的思考課題解決能力を育むアプローチとされており ジョン前田氏の提唱するSTEAMの考え方に近いものとなっています

また RISDロードアイランドスクールオブデザインやMITマサチューセッツ工科大学を訪れた際のエピソードも紹介されました 工科大学のキャンパス内に数多くのアート作品が常設されていることに着目し こうした環境がイノベーターたちの感性や創造性を支えているのだと話されました

さらに RISDやMITに共通する学びの特徴として オブジェクトベースドラーニングモノに触れて学ぶことについても紹介されました これは 教科書や情報だけではなく 実際の“モノ”や“物質”と向き合うことで学びを深める考え方です 教科書から学ぶのではなく 現代アート作品など 記憶と物質が刻まれた生のオブジェクトに直接触れること そうすることで問いが自然と生まれていくと語られました こうした学びは RISDやMITでも重視されており 創造性を育む教育の基盤のひとつになっているそうです


会場からの質問

ここまでのレクチャー終了後 参加者から寄せられた質問に対して 藤原先生にご回答いただきました 抜粋してご紹介します

Q1生命産業の時代において STEAM教育はどのような役割を持つのでしょうか また オブジェクトベースドラーニングにおいて 映像を用いるというのは良くないのでしょうか

藤原先生の回答
重要なのは市民性公共性です 情報分野のイノベーションにおいても 困っている人を包摂できる倫理観や市民性を育むことが求められており その点でもSTEAM教育は大きな役割を持っています
また オブジェクトベースドラーニングでは 文字や数字だけでなく 実際のモノや身体感覚を伴う体験が重要になります 映像が良くないわけではなく 映像をきっかけに演劇やアート作品へ発展させ 自分で再現してみるような身体性を伴うアプローチは非常に効果的です

Q2 教員をしています 授業が面白かっただけで終わりがちな現状をどう超えるといいでしょうか

藤原先生の回答
面白かったで終わるのは第1層 第2層として それをどう社会と関わらせるかという個人性から社会性への展開をカリキュラムに必ず組み込むようにしています 自分自身の経験を踏まえ 場合によっては誰かと一緒に何かを作るというプロセスを通じ 出口をどう生み出すかがポイントです

会場からはさらに活発な質疑応答が続き あっという間に終了の時間となりました

テクノロジー アート 環境 市民性を横断するSTEAMの視点が サイアフ2027のテーマPLANET SNOWを考える上でも重要であること今回の対話は まさにその繋がりや可能性を実感させてくれるものとなりました

最後に 藤原先生よりサイアフに向けた温かいコメントをいただきました

まだサイアフに伺ったことはないのですが Webサイトでの教育コンテンツの充実ぶりに驚かされていました 大切なのは 市民の方々がどうげいじゅつさいに深く関わっていけるかです ここでアートに触れた経験が 将来大学生や社会人になった時に素晴らしい閃きとして繋がっていきます 国単位の教育改革には時間がかかりますが 地方自治体やげいじゅつさいという開かれた場には それを先導する大きな可能性があります 他自治体にとっても サイアフの取り組みから学ぶことは非常に多いはずです 大いに期待しています

藤原先生からいただいたこのエールを受け サイアフ事務局も 次回のサイアフ2027 そしてこれからの未来の教育に向けて 本質的でクリエイティブなプログラムを皆さまと共にしっかりと作り上げていこうと 決意を新たにする貴重な機会となりました

会場の皆さまからも大きな拍手が送られ 熱気に満ちた第1回ミーティングは幕を閉じました ご参加いただいたみなさま ありがとうございました
教育喫茶では今後も アートを通して社会や未来を考える対話の場を大切にしながら サイアフ2027へ向けて共に学びを深めるコミュニティの輪を広げていきます

次回の教育喫茶ミーティングは しちがつ25日どようびの開催を予定しています テーマや詳細は決まり次第 WEBサイトでお知らせします

教育喫茶メンバー大募集

教育喫茶では 教育関係者や学生 アーティストなどが集い 様々なテーマに基づいた実験的なプログラムを制作したり体験したりする中で 学校とげいじゅつさいがこれからの教育を共に考え 創造するプラットフォームとなることを目指しています

次回開催のご連絡をご希望の方は 件名にお知らせ希望と記載の上 お気軽にメールをお送りください

お問い合わせ先operationsiaf.jp

基本情報

サイアフスクールではこれまでSTEAMを重要なテーマに掲げ 対話やイベントを重ねてきました
分野を横断するこの学びに対し げいじゅつさいという場から何ができるのか 私たちはその可能性と課題について 対話を続けています

現在 社会のなかでSTEAM教育という言葉が広がっていますが そもそもなぜ今 この枠組みが必要なのでしょうか
そこには 私たちが生きる社会の構造や 時代の変化が深く関わっています

今回のミーティングでは 愛知県立大学准教授であり アートと社会の関係を研究されている藤原智也氏をお招きします
STEAMが生まれた背景や AI時代にアート思考が果たす役割など 特定のスキルにとどまらないアートと社会の本質的な関係について 広い視野で学びを深めていきます

後半では これまでの活動で見えてきた気づきを振り返りながら サイアフスクールのこれからの展望を共有します
これからの表現と学びのあり方を みんなで一緒に考えてみませんか

日時
2026年ごがつ23日どようび16時18時
会場
札幌市資料館旧札幌控訴院2F サイアフプロジェクトルームオンライン
ゲスト講師
藤原智也愛知県立大学 准教授 オンライン出演
定員
無料要申込会場定員先着15名/オンライン制限なし ZoomのURLはお申し込みいただいた方に後日お知らせします
参加対象者
教育関係者 教育とアートに関心のある札幌市民の方
持ち物
なし
申込
参加をご希望の方はごがつ21日もくようび17時までに operationsiaf.jp まで現地もしくはオンラインと記載の上メールでご連絡ください
  • 当日は活動記録として撮影を行うほか 撮影した写真を札幌国際げいじゅつさいのホームページ等で公開する場合があります 支障のある方は当日お声がけください
藤原 智也

藤原 智也 FUJIWARA Tomoya

愛知県立大学 准教授、Ph.D. 国公立中学校の美術教員を経て、2014年から現所属。美術鑑賞方法、美術のカリキュラム開発、芸術に関わる教育・文化政策の分析などで業績多数。近年は芸術と市民性の関係について、STEAMや芸術祭を事例として研究中。