SIAF2014

『ジャガイモの視点から新しい世界観を描く;<農業と芸術>をめぐる北欧と日本の対話』 オーサ・ソーニャスドッター+富田俊明

本プロジェクトは、スウェーデンのアーティスト・教育者オーサ・ソーニャスドッターの代表作Potato Perspective(ジャガイモから見る世界)の日本版を、ソーニャスドッターと富田俊明が共同で制作するものです。北海道大学キャンパスでのモバイル農場、余市のエコビレッジ、札幌市内の家庭菜園ネットワークの3カ所を舞台に、日本各地から集めた約20品種のジャガイモを栽培しながら、Potato Perspective日本版を制作しています。8月末にはソーニャスドッターが来日し、講演、ワークショップ、展示を行います。近年、日本の日常は根底から動揺しています。この危機感から、本プロジェクトは、生存と直結する<農業と芸術>をめぐって実践を重ねる北欧との息の長い対話をとおして、新時代にふさわしい持続可能な生活とアートの在り方を、北海道の地において探ることを目的としています。

Potato Perspectiveをとおしてソーニャスドッターは、栽培植物の中に見られる人間と植物の関係、特にジャガイモが近代化に果たした役割に注目しています。高名な環境活動家ヴァンダナ・シヴァらが「緑の革命」に代表される営利農業化に抵抗し、伝統農業の存続を勝ち取ったNavdanyaのコミュニティに滞在したことが、プロジェクトのキッカケになりました。この経験を北欧の日常に落とし込むためジャガイモに注目し、手ずから栽培を始めましたが、すぐにジャガイモには別のストーリーが埋め込まれていることに気づきました。ヨーロッパによるアメリカ大陸の植民地化から現代のEUの規制によるローカルな品種の非合法化まで、栽培植物ジャガイモをめぐる知的財産や所有権の複雑な問題は、インドのNavdanyaの農民達の直面するグローバルな問題に通底しています。ソーニャスドッターはその後ジャガイモ原産地アンデスの原住民から伝統的品種交配法を学び、農民が元々備えていた創造性を恢復させるべく、ヨーロッパとアメリカ各地でPotato Perspectiveを実施、人口を支える基幹農作物をとおして近代化を見つめ直し、現代生活を見通す深淵かつ親しみやすいユニークなパースペクティブを提供しています。

2000〜04年に実施された日本とデンマークの交流プロジェクトに参加し、富田俊明は、ソーニャスドッターと共同制作を行いました。彼女を通じて社会民主的で革新的なビジョンを描こうとする北欧の気鋭のアーティストたちと交流する中、社会や生活に密着した北欧の<人々のアート>に影響を受けてきました。2010年に北海道へ移住以来、ソーニャスドッターのPotato Perspectiveを北海道に移植するアイディアを暖めてきました。本プロジェクトは、アジア圏で初のPotato Perspectiveの本格的な紹介となります。インド、ヨーロッパから北海道に舞台を移し、Potato Perspectiveの視点から、北海道ひいては日本の近代化と現代の状況を見つめ直します。また北欧との対話をとおして、私たちの時代に必要なアートの形についても考えて行きたいと考えています。
ジャガイモ

<イベント予定>
講演会+ワークショップ『だいちにふれる:ジャガイモ視点で見通す多様性と民主主義』
日時:8月24日(日)10:00〜16:00(予定)
会場:北海道大学 遠友学舎ほか

展覧会+ワークショップ『だいちにふれる:ジャガイモ視点で見通す多様性と民主主義』
日時:8月30日〜9月6日 10:00〜17:00(予定)
会場:札幌資料館2F 連携事業ワークショップルーム

関連企画
連携事業ラウンドテーブル『札幌の緑、農業、いとなみ』
日時:8月10日(日)14:00-16:00
会場:札幌資料館2F 連携事業ワークショップルーム
主催:札幌国際芸術祭

ワークショップ『札幌の都市農業について考える』
日時:
8月24日(土)14:00-16:00「Potato Perspective (1) -ジャガイモ視点で見通す多様性と民主主義」
9月6日(土) 14:00-16:00「Potato Perspective (2) プロジェクト報告会」
会場:札幌資料館2F 連携事業ワークショップルーム
主催:農業を考える市民とアーティストの会

関連リンク:http://www.potatoperspective.org/
問い合わせ:izuminohanashi@gmail.com
(富田俊明)