SIAF2020プレイベント
「隆介さん! クラウスさん! アーティストって何してるの?」開催しました!
10月18日、SIAF2020プレイベントスペシャルトーク「隆介さん!クラウスさん!アーティストって何してるの?~アイデアが作品になるまで×作品が展示されるまで」を札幌市役所ロビーで実施しました。
このプレイベントは、2020年12月19日から開催するSIAF2020に向けて、みなさんと芸術祭とが少しづづ距離を縮めていけるよう実施しているプログラムです。今回は、「芸術祭を知る・アーティストを知る」ことに重点をおいて、2名のアーティストと2名の学芸員をお呼びしました。
作品を生み出すのがアーティストです。そしてアーティストをサポートしながら共に展示を実現させるのが学芸員です。学芸員は、その場所で展示するためのテーマやコンセプトといったような大きな筋道を作ったり、予算やスケジュールの管理をしたりと、作品の展示が完了するまで、様々な面からアーティストをサポートします。最近ではキュレーターと呼ばれたりもします。
この日は、アーティストと学芸員がコンビになって、これまでのプロジェクトを紹介し、その後4名で色々な話をする流れとなりました。まずは、SIAF2017のモエレ沼公園の参加アーティストだった伊藤隆介さんと、その会場を担当した宮井和美さんコンビのお話です。
伊藤さんは、緻密に作られた小さな模型をカメラで撮影し、大きく投影する作品をこれまでに数多く発表しています。その映像は、まるで現実のように見えてきます。これは1960年代の映画の製作現場ではよく用いられていた「特撮」と言われる手法ですが、これを作品に取り入れる伊藤さんは、「よく言われているバーチャルリアリティー(仮想現実)ではなく、リアリスティックバーチャリティー(現実的な仮想性)を作り出している」と説明してくれました。こういったコンセプトを軸にSIAF2017で制作したのは、モエレ沼公園の成り立ちを紐解き、そこからのインスピレーションを得た《層序学》、《メカニカル・モンスター》と自転車が意思をもって山に登ってゆく壮観な屋外インスタレーション《長征ーすべての山に登れ》でした。
SIAF2017 《長征ーすべての山に登れ》 撮影:小牧寿里
宮井さんからは、この時、伊藤さんから作品のアイディアが提示されてから、それをいかにして実現させていったのか、という実践的な手法が紹介されました。
《長征ーすべての山に登れ》の設置の際は、美術作品といえども、作業は夏の屋外。様々な苦労があったとのことです。学芸員の重要な役割の一つが、テーマやコンセプト作りですが、それは数ある準備の中の最初の段階にすぎません。それ以降も実に細かな準備や手助けをしながらなんとかそれを実現に導いていく現実的なプロセスを垣間みることができました。
そして、続いてはSIAF2020のジェドシェツカディレクターと過去に何度も仕事をしているクラウス・ホビッツアーさんコンビのお話です。クラウスさんは、ドローイング(線画)という線を描くことに重きをおいた手法を使って様々な場所、そして様々な大きさで公共空間に作品を出現させます。
2001年にウィーンの中心市街地に開館したレオポルト美術館のオープニングには、クラウスさんがコンピューター上で描いた作品が巨大に掲出されました。しかしながら、その制作過程は、今では想像できないほど大変です。当時は印刷する機器の限界でとても小さく分割した状態で、何枚にも分けてドローイングを出力し、それを手作業で綺麗に貼り合わせていくという手間のかかる作業。それが時代を経て、技術が進化することで、どんどん出力できるサイズが大きくなり、そして素材もどんどん変化して、今では全く異なる制作環境になっています。
またクラウスさんは、2000年代には一般市民を描いた作品を多く制作していました。
これは、まったく無名の一般市民をまるでスターのように描き作品として発表することをコンセプトにしていましたが、SNSの普及により、一般市民がSNSを通して実際のスターになることができるようになったため、作品に組み込むことの意義が大きく変わってしまったとお話しされていました。そして現在の仕事として、新聞のコラムの挿絵やinstagramで更新を続けているgifアニメションなどが紹介され、技術の進歩に伴い、ドローイングの手法も大きく変わっていることを知ることが出来ました。
プレゼンテーションのあとは、4名でのディスカッションです。
撮影:詫間 のり子
伊藤さんとクラウスさんという二人の作品は、二人が時間をかけて作り出す手作業が作品の基礎になっていますが、みなさんの目の前に展示される作品は映像であったり、機械からの出力物です。その共通点もあって、伊藤さん、クラウスさんはそれぞれの作品に非常に興味を持ったようでした。それに加えて二人に共通していたのが、私たちが生きる現代に対する客観的な視点です。
日常、ニュース、歴史、政治、技術など様々な状況に対して関心を寄せて、それが作品に反映されていることを感じました。また、そんなアーティストを専門的な知識を駆使し、様々な面からサポートして、展示を実現させる学芸員のお仕事を垣間見ることができる機会となりました。
さて、次のプレイベントはいよいよ制作のワークショップです。興味のある方は、ぜひ参加ください。
【次回のイベント】
きる・はる・つなぐ・つみあげる 市役所で体験!?~現代アートの作品づくり~
現代アートのシーンで活躍するシェモさんとライナーさんと一緒に、「紙」や「角材」を使って作品制作を行うワークショップです。
【日時】2019年11月20日(水)-24(日)12:00~18:00
※期間中いつでもご参加ください。短時間の参加も大歓迎です。
(24日は14時からアーティストトークを行います。)
【会場】札幌市役所 1階ロビー(札幌市中央区北1条西2丁目)
【参加方法】申込不要(直接会場へ)※人数が多い場合はお待ちいただくことがあります。
https://siaf.jp/event/workshop/p11137/