事務局からのひとり言
2025.04.03

青木美歌《未生命の遊槽》が北海道立近代美術館で公開されています

2025年3月から2026年4月12日まで、SIAF2024のメイン会場であった『未来劇場(東一丁目劇場施設)』の参加アーティスト、青木美歌さんによる《未生命の遊槽》が北海道立近代美術館で展示公開されています。この展示は、SIAF2024での展示をきっかけに、北海道立近代美術館が作品を収蔵したことから実現しました。

芸術祭が終わった後に、出展作品が地域の美術館に収蔵されることには特別な意味があります。

 

SIAFは特定の専用会場を持たない芸術祭のため、閉幕後、作品はアーティストが管理します。しかし、美術館へ作品が収蔵されるとなれば、専門家による適切な管理体制の下、長期的に作品が保存され、その作品を通じて芸術祭の存在や時代性が後世の人々に伝えていく道筋が開かれます。

今回の《未生命の遊槽》の収蔵は、この理想的な状況が実現した特別なケースであり、SIAFにとっても大きな成果となりました。

そこで、改めて、その経緯をご紹介させていただきます。

1, アーティストと作品について

青木美歌さんは、1981年に東京で生まれ、札幌で育ちました。大学時代にガラスという素材に出合い、これからの創作活動を期待されていた最中、2022年に逝去されたアーティストです。青木さんは、未来劇場の奈落の展示スペースに、その繊細で魅惑的な造形力を持ったガラスの作品で、儚くも強い煌きを生み出してくれました。その中核となった作品が、青木さんの最大級のインスタレーション(空間作品)である《未生命の遊槽》で、展示空間の最後に展示されていました。

青木美歌さんの展示は、SIAF2024に向けた準備の最初期から検討されていて、程なく決定しました。

現在、作品の多くはご家族が管理されていることから、事務局はご家族と出展の調整を始めていました。その最中、所蔵家から《未生命の遊槽》の札幌の展示を検討できないだろうかという相談を受けることになります。なお、所蔵家の希望もあり、展示の際に、本作品名は明示されていませんでした。

この作品は、滋賀県近江八幡市で開催された「BIWAKOビエンナーレ2010」のために制作された作品で、古い町家を会場に発表されました。繊細かつ大小様々なパーツ約350点で構成され、会場の個性に合わせて一つの空間を作り上げます。2012年、2014年にも同じ会場で公開された後、所蔵家の倉庫で保管されていました。

2, 未来劇場での展示

作品は、床もしくは展示台に設置する要素と浮遊する要素の2つのパートの展示で構成されています。

「BIWAKOビエンナーレ2010」では、町家の畳からまるで生えてきたようにガラスパーツは展示されていました。畳を持ち込むかどうかという議論も当初にはありましたが、結果的には、SIAFならではの方法を模索しながら作業を進めていきました。

そして、展示台の上に浮遊するガラスパーツ。青木さんの作り出したフォルムは非常に柔らかなイメージではあるものの、現実的には、ガラスで出来ているため、床に落ちれば、または、力が入れば、容赦無く砕けてしまいます。そのために非常に大変な展示作業になりました。

そして無事展示が完了したのが、未来劇場での展示でした。

3, 北海道立近代美術館の収蔵に向けて

芸術祭では開催直後から返却の準備を進める必要があります。札幌から本州への返却準備を進める中、返却とは異なる可能性が出てきました。

北海道立近代美術館には5つの収集方針(「北海道の美術」「日本近代の美術」「エコール・ド・パリ」「ガラス工芸」「現代の美術」)があります。青木美歌さんの作品は、その中の「北海道の美術」「ガラス工芸」「現代の美術」という3つの要素が当てはまることから、美術館に収蔵するコレクションとして検討するべき条件が揃っていると捉えることができます。何より美術館への収蔵は、札幌に大きな作品を残すことを希望していたという青木さんの意思にも繋がります。そのため、収蔵される可能性があるのであれば、作品を本州に戻さず、札幌に保管しておくことも検討することになりました。

結果、収蔵される可能性を秘めたまま、《未生命の遊槽》は閉幕後、札幌に保管されていました。そして昨年11月に、晴れて北海道立近代美術館のコレクションとして収蔵されることになりました。

4, 近美コレクション 青木美歌《未生命の遊槽》の実現

上記が、現在公開がスタートした「【近美コレクション】青木美歌《未生命の遊槽》」が実現した経緯です。

この収蔵からの展示という流れは、まずは何より《未生命の遊槽》という作品の魅力があったからこそ実現しています。ですが、その背景には、青木美歌さんとその作品に対する実に多くの関係者の思いと敬意、そして未来の鑑賞者への想像力があったからこそ実現されたものだと思います。

未来劇場での展示はわずか37日間でした。しかし現在は、中村聖司さん(学芸副館長、現・北海道立旭川美術館館長)のキュレーションによりまた新たな形で、1年もの間、さらに多くの方、特に札幌の方の目に触れる機会が担保されました。

短かった芸術祭会期に、残念ながらこの作品を見逃してしまった方、是非展示に足をお運びください。

そして、すでに未来劇場で鑑賞した方も、改めて足を運んでみてください。  北海道立近代美術館という空間で、新たに息づく《未生命の遊槽》は必見です。

なお、SIAF2024で北海道立近代美術館に出展されていた石井亨さんの作品も新収蔵作品として展示されています。(〜7/6まで)合わせてお楽しみください。

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[開催概要]

展覧会名:近美コレクション 青木美歌《未生命の遊槽》

会期:2025 年 3 月 29 日(土)~2026 年 4 月 12 日(日)  [予定]

開館時間:9:30~17:00

*カルチャーナイト(7 月 25 日(金)): 9:30~21:00

*夜間開館(8 月 22 日、29 日、9 月 5 日(いずれも金)):9:30~19:30

※入場は各閉館時間の 30 分前まで

休館日:月曜日(祝日または振替休日のときは開館、翌火曜日休館。11/4 は芸術週間のため開館)、展示替期間、年末年始(12/29~1/3)等

会場:北海道立近代美術館 展示室 A・2 階

観覧料:近美コレクション観覧料でご覧いただけます。一般 510 円(420 円) 高大生 250 円(170 円)

※( )内は 10 名以上の団体料金

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