令和6年度第1回「教育喫茶」を実施しました!
5月19日(日)、札幌市資料館SIAFプロジェクトルームにて今年度1回目の教育喫茶を実施しました。
教育喫茶は、教育に関わる先生や学生、アーティストなどが集い、教育とアートに関する課題や可能性を話し合うコミュニティの場として2023年にスタートし、以来隔月ペースで実施しています。
この日は、SIAFが札幌市内の小・中学生を対象に今年度の秋に実施する出前授業の事前体験会として、学校の先生など合計5名にご参加いただきました。
「アーティストが開発!プログラミングで森を作るwebアプリケーション体験会」
今年度の出前授業では、暮らしの中にある身近な存在の知見を広げ、新しい気づきや発見を得る、ということをねらいとし、アートユニット・フジ森が「植物」「木」をモチーフに開発したテキストプログラミングのウェブアプリケーションで「自分だけの木の図形」を制作するワークショップを実施します。
そこで今回は、札幌市博物館活動センターの山崎真実さんをお迎えし、実際の「植物」や「木」の生態についてレクチャーを受けた後に、フジ森によるプログラミングの実践レクチャーに移るという流れで体験会を行いました。
「植物の形、茎と葉」
まずは山崎さんによる「植物の形、茎と葉」をテーマにしたレクチャーです。
植物は、分類するために世界共通のルールが整備されているとのことで、「茎」、「枝分かれ」、「葉」の部分の構造のルールについて学びました。植物の体の軸になるのが茎、葉は必ず茎につく、茎は必ず葉をつけるということを学んだ後で「ではサボテンの茎はどこでしょう?」と山崎さんから問いかけられると、参加者の方は悩みながらもそれぞれに回答。
「面積の広い緑色の部分が茎、トゲは葉です」との正解に驚きの声が上がりました。
また、茎と葉をセットとする考え方や節の規則性、節間の長さの程度は同じ種や一個体であっても一定ではないなど、実際に自宅の庭から持ってきていただいたナナカマドを観察しながらお話を伺いました。複数の葉で一枚と定義する場合がある(複葉)ということについても「知らなかった!」との声が。
その他、茎と枝の分類や葉の並び方のルールについても教えていただきました。最後に山崎さんは「でも自然は曖昧なもの、必ずしもルール通りではありません」と仰られ、植物にも個性があるということが印象的でした。
普段身近に存在している植物ですが、名前や咲く時期を知っていても今回伺った内容は知らないことばかり。まだまだお話を伺いたいところですが、続いてフジ森の藤木淳さんにバトンタッチをしてプログラミングの体験に移ります。
「自分だけの木の図形」を制作する
植物を観察するのに相対して、今度はそれぞれPCを開き、フジ森さんが開発したウェブアプリケーションでプログラミングコードを入力してオリジナルの木を作ります。
座標をヒントに線を引くプログラミングコードを中心にその角度や長さ、色、繰り返す回数を工夫しながら、思い思いの木を作っていきます。
すぐにコツを掴む方、悪戦苦闘しながら作成する方、先ほどまで賑わっていた会場内が静まるほど集中して制作していきます。
全員が出来上がった作品を投稿すると、なんと参加者の木が一つの画面に現れ、世界に一つだけの森が完成しました。
森がダイナミックに展開される光景に、思わず画面を撮影する方も。
参加した方からは
・楽しかった。新しい発見になった。
・単純なパターンの繰り返しが大きくなると全く違うものになるのに驚いた。
・こういう木があってもいいじゃないかという思考を育てることにも繋がりそう。
・身近なものでも違う視点から見ることで物事の見方が変わってくることに気がついた。
など様々なご感想をいただきました。
今回の教育喫茶にご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
いただいたご意見を参考に、児童生徒のみなさんがワクワクし、創造力や思考力が思う存分発揮できるような充実した出前授業となるよう、準備を進めて参ります。
「教育喫茶」では、教育に関わる先生や学生、アーティストなどが集い、色々なテーマに基いた、実験的なプログラムを作ったり、体験したりする中で、学校と芸術祭が「これからの教育」を共に考え創造するプラットフォームとなることを目指しています。
興味のある方、参加希望の方は事務局までお問い合わせください。
お問い合わせ先:operation@siaf.jp
山崎真実(札幌市博物館活動センター)
札幌市博物館活動センター学芸員(札幌市文化振興課博物館学芸担当係長)。専門は植物分類学。札幌の自然史について一般向け行事や展示の企画・実施も担当。卒論で標本の扱い方を学び、その後、高山植物を研究するつもりが大学院受験対策で読んだ本の一節により「水草って変な植物だ!」と、水草に転向。研究生(就職浪人)を経て2001年10月から現職。
フジ森
フジ森は、藤木淳と藤木寛子の夫婦によるインタラクティブ・アート・ユニット。構想はそれぞれで持ち寄り、藤木淳がインタラクティブ設計、藤木寛子がビジュアル構成を担当し、鑑賞者参加型のアート作品を展開している。藤木淳は独自のアルゴリズムに基づくインタラクティブ作品を制作。藤木寛子(清水)は実物のシルエットとモノクロのアニメーションを融合させたインスタレーション作品等を制作。2014年より合作を始め、2019年よりユニット名をフジ森とした。