「見る・魅る・現代アート!~パブリックアート鑑賞in大通公園~」を開催しました。
6月28日(金)に、厚別区民センター特別講座「見る・魅る・現代アート!~パブリックアート鑑賞in大通公園~」が開催されました。この講座は厚別区民センターが主催し、SIAF事務局がツアー内容を企画しました。
朝から小雨の降る中、申込された10名が札幌市民交流プラザ(さっぽろ創世スクエア内)に集合し、鑑賞ツアーがスタート。
初めに、参加された方に理由を尋ねてみると、「アートはよくわからないが、見るのは好きなので色々知りたい」「普段はアート作品を見ることは少ないが、今日をきっかけにしたい」とさまざまでした。
最初に、2018年10月に開館した札幌市民交流プラザに展示されている作品について、同館キュレーターの樋泉さんから解説をいただきました。
壁:《札幌のかたち図鑑》 右:《札幌の凹みスタディ》
こちらは《凹みスタディ―札幌のかたちを巡る2018-》という作品の一部です。作者の谷口顕一郎さんは札幌生まれの彫刻家で、これまで地面の亀裂や壁の傷などの「凹(へこ)み」をモチーフにした立体彫刻の作品を制作してきました。
今回の作品では、航空写真から札幌付近の市街地と自然・水際の境目、点在する緑地などの輪郭を写しとったものを基に《札幌のかたち》を制作し、それらを河川の流れ等で51個に分け、パーツを蝶番でつないで《札幌の凹みスタディ》を制作しています。
特に《札幌の凹みスタディ》は天井から吊るされており、見る角度によって印象が異なる作品でした。施設のパンフレットに載っていた写真が「鳥が羽を広げたように見える」ということで、同じように見える角度を探す方もいました。
さっぽろ創世スクエアには、ほかにも北海道出身の若い作家による作品が展示されていました。
左:《HORIZON》 国松希根太 作 右:《舞-MAI-》 渡邊希 作
続いては大通公園に繰り出し、野外彫刻鑑賞です。この頃には雨もあがり、ツアー日和となっていました。
まず向かったのが3丁目の彫刻《泉の像》。この像は、3人の女性が両腕を上げて踊っているように見える作品で、背後には噴水やテレビ塔が見えることから絶好のフォトスポットとなっています。
作者の本郷新は札幌出身で、師匠の高村光太郎や、《考える人》を制作したロダンらの「人の内面が感じられる生命感あふれる彫刻」という流れをくむ、戦後日本の具象彫刻を代表する彫刻家です。
講師の細川マネージャーからの解説を聞く参加者
また本郷は、「彫刻作品は個人の住宅ではなく、公共施設にこそ置くべきだ」と唱えた人だったとのこと。この《泉の像》は、ニッカウヰスキーの創始者、竹鶴氏が「なぜ大通公園には彫刻がないのか?」と話したことがきっかけで制作されたそうですが、公共の場の彫刻という本郷の思いも反映されていたようです。
続いて8丁目に移動し、イサム・ノグチ作《ブラック・スライド・マントラ》へ。こちらは札幌市民には滑り台としておなじみですが、作者晩年の彫刻作品でもあります。
ここでは、本郷新とイサム・ノグチの違いについて解説がありました。実は二人は1歳しか違わない同世代ですが、イサム・ノグチは師匠のブランクーシのもとで学んだ後、ニューヨークで盛んだった「ミニマルアート」などに接し、本郷新とは違った視点で作品制作に取り組んでおり、作品の雰囲気はまったく異なります。
どちらが良いというわけではなく、作者の歴史や、どういう意識でどういうものを見てきたかを知るだけでも、作品の見方が変わってくるのではないでしょうか。
最後に鑑賞した《若い女の像》 佐藤忠良 作
ツアーの最後には、札幌市資料館で今日の解説を振り返りつつ、SIAFについての紹介を行いました。
参加された皆さんからは、「面白かったから歩くのも苦にならなかった」「アートは分からない、だからつまらない、となっている人が多いと思う。今日のようなきっかけがあればよい」といった声がありました。
SIAF事務局では、今後もアートの楽しさを皆さんにお伝えするイベントを実施予定です。
7月24日(水)には、SIAF2020プレイベント「みんなで考える!SIAF2020のたのしみかた」を開催します。一緒に芸術祭の楽しみ方を考えませんか?ご参加をお待ちしております!(申込はこちら)