札幌国際芸術祭2014のテーマを象徴し、都市の公共空間にふさわしい音の作品を募集した国際コンペティションです。世界中から578作品の応募があり、札幌国際芸術祭2014ゲストディレクター 坂本龍一による厳正な審査を経て、グランプリ1 作品、ゴールド1 作品、シルバー4作品が選定されました。グランプリ作品(サウンドロゴ)は、札幌国際芸術祭2014開催にあわせて市内各所の芸術祭拠点に展示再生されます。 また、札幌市資料館エントランスでは、上位6作品(ロングバージョン)が展示再生されます。
国内外から500作品にも達する応募があったことは、非常に嬉しい驚きでした。私が審査する上で注目したのは、簡潔さ、ロゴとして耳に残るインパクト、音の美しさ、札幌らしさ、SIAF らしさ、ユニークさ、などの点です。これら全てをクリアーするのは大変なことだと思いますが、今回、上位に選ばれた作品は、それらの点でとても優れていて、特にグランプリ[ 惑星の歌 ]、ゴールド [ seed ofan urban tree ]、シルバー [ Voicing (part III) ] の上位3作品は甲乙つけがたい質のものでした。たくさんの方に参加していただき、心から感謝しています。SIAF の期間、このサウンドロゴが街に流れますし、資料館内では上位6作品の、長いヴァージョンが流れますので、市民のみなさまには、ぜひ立ち寄って耳を傾けていただければと思います。
海で見つけた魚の骨、足踏みオルガン、鈴、鳥の声、環境音、アイヌ楽器トンコリなどの音をコンピューターで編集。自然物や数十年前の楽器とテクノロジーを合わせ作曲。 それは小さな「都市と自然」の形。 作品の物語は、空間に漂う小さな物質が集まり、星を形成していく。星は変化をしながら、やがて膨大なエネルギーによって爆発する。粉々になった小さな物質は静かに引き合い、また星をつくっていく。
街の騒音のなかで、この落ち着いたハーモニーが聞こえてくると、ふと耳を澄ましたくなるような音で、少し日常とは異なる心もちになるのではないでしょうか。北海道に縁の深いトンコリの音が、北国らしいよい味わいを加味しています。これはご自分で弾いているそうです。
1982年千葉県生まれ、香川県在住。石、木、砂などの自然物、環境音、楽器などを用いた音楽制作をしている。音響ユニットtoritohitoで瀬戸内国際芸術祭2010のPV音楽を担当。ユニット解散後、ソロで音楽、絵画などの作品展示、ワークショップを行っている。同時期にタブラ奏者、井上真輔とaotofを開始。各地でパフォーマンスをしている。
都市にまかれた種が目を覚まし、伸びて、成長し、大きな樹になっていく様子を表した、音の作品となっている。ところどころで樹の精が喋っている。厳しい季節や状況のときも、光と水の恩恵を受けて少しづつ成長していく種の声を表現している。私達はストックホルムに音楽スタジオEson Studioを持ち、そこで音楽制作を行った。実際に3人でスウェーデンの森を歩き、集めた自然の音素材(水、風、葉、枝、草、鳥等) を曲中で使用している。環境音を利用したサウンド・インスタレーションとして、この音楽が流れたとき、目にイメージが浮かび、耳で触れることのできる音の作品を目指した。
グランプリと甲乙つけがたい魅力にあふれた作品です。日本人の方ですが、現在スウェーデンにお住まいの方で、そのせいか、全体に北国の風景を感じさせます。まるで森のなかにいるような空気感に包まれています。
林 小百合
福井県出身、ストックホルム在住。3歳よりクラシックピアノを始める。信州大学教育学部音楽科を卒業後、スウェーデンに単身音楽留学し即興音楽や作曲等を学ぶ。Hannes Egnellと作曲を手掛けた短編映画 "moment" が2013年富川国際映画祭、オーシャンサイド国際映画祭にて入選、上映される。自然が美しい環境で生まれ育ったことから環境音を好む。現在インターナショナルスクールで音楽教師として働く。
ハンネス イグネル
スウェーデン・ストックホルム生まれ。音楽家一家の元で成長。高校生の時に、音楽の弁居を始め、ドラム、サックス、ピアノを習う。2つのジャズ学校に進んだ後、ヨーテボリの音楽演劇アカデミーに入学を認められ、即興演奏を学ぶ。その中で、最も気に入ったものは作曲だった。2010年夏にヨーロッパツアーに行った後、ドラマーとしていくつかのレコーディングを始め、2012年にアルバムをリリースした。2つのショートフィルムの音楽の作曲を行っており、そのうち1つが、富川国際ファンタスティック映画祭とオーシャンサイド国際映画祭で賞を受賞。
ハンナ ビールンド
スウェーデン・ヨーテボリ生まれ。スウェーデン人シンガー、作曲家であり、現在、ストックホルムのロイヤルカレッジオブミュージックのジャズ・即興演奏部に在籍。音とジャンルを組み合わせ、新しい聞き方を作り出す面白い方法を見出そうとしています。いくつかの音楽奨学金を受けており、現在ヨーロッパとオーストラリアのツアー中。
人の声はおそらく、人類が用いた最も旧い楽器である。本作品のミニマルな構成は、3つのパートからなる。私は今回、女性の声の3つの可能性、すなわち、ささやき、話し声、歌声の可能性を探求した。この作品で用いられている作曲技術は、カノン、浮遊的な重ね合せ、旋律パターンである。 特に旋律パターンについては、約16種の異なるパターンを録音し、本作品の中で繰り返し反復している。旋律パターンは、作品が最高潮に達するまで成長していき、ソナタの再現部のように遠のきながら、ついには、ちょうど作品の始まりの部分のように消えゆく。本プロジェクトに参加してくれたMonica de Nutに心から感謝する。
海外からの応募作品です。インパクトということでは、これが一番かと思いますし、コンセプトも現代アートのようで、SIAFらしさの点でも素晴らしいと思います。ただ、札幌らしさという点が希薄だったと思います。
リトアニアとスペインで作曲家・ピアニストとして学び、主にクラシック室内楽とジャズの領域で、サウンドトラック制作を行っている。制作プロセスにおいては、インスピレーションを得る手がかりとして、イメージ(写真、映像、空想)がとても重要な要素になっている。また、現代音楽、実験音楽、さらには電子音楽の作曲も行う。
「Depth Perception」は、モジュラーアナログ合成の組み合わせ、複数環境のフィールドレコーディング音を用い、デジタル編集を経て制作されている。 曲の構成は、自然と人間のインタラクションによって生成される現実世界の摩擦に着想を得ている。現実世界の摩擦は、都市やランドスケープ、マインドスケープといった具体的で固有な要素に影響を与える。私は、身体的・精神的経験の広がりを伝えること、また、我々の現在のリアリティが、自然と人間のインタラクションによって如何に形成され、変容してきたのかについて、聴き手に再評価を促すことに関心がある。
私も好きだった、シャルルドゴール空港で使われていた電子音のサウンドロゴのようで、なかなか良いですね。 ただ、あれがあまりにもインパクトもありましたし、長く使われて、たくさんの人の耳についていますので、なるべく似ないように、異なった方向性で作った方がよかったと思います。
Marco Liyは、カナダのケベック州モントリオールを拠点に活動する、エレクトロアコースティック音楽の作曲家、サウンドアーティストである。大胆な視点を持って音の実践に取り組み、常に未知の音の可能性を探求し、音の体験領域を拡張している。Concordia Universityのエレクトロアコースティック音楽の学習課程を卒業。モントリオール、モナコ、幾つかの国際フェスティバルなどで作品を発表している。
現在東京住まいですが、子供の頃に札幌在住だったので久しぶりに音が設置される空間などを訪ね、イメージを膨らませる事から始めました。そこで実際に録音してきた建物内の音や札幌軟石、自然音などの環境音と、電子機器などを用いた即興性の高い演奏音などを使い、訪れた場所を思い浮かべながら会場全体の外と中の雰囲気を繫ぐ「気配」のような音を目指しました。何か少しでもそのような感じが伝わるものになっていれば幸いです。
なかなかよいと思いました。ただ、市民に親しんでもらおうというSIAFのロゴとしては、少し暗いですかね。
中1でYMOにのめり込みモロに影響を受ける。何か作る世界に憧れ多摩美に進学。卒業後しばらくして洋弓の初心者教室に参加したところなんの拍子か世界大会日本代表などになるも故障を機に写真や音楽の制作活動中。
タイトル『五つの風』の“五”に込めた想いは、五行説の木、火、土、金、水の“五”であり、法(ほっ)竹(ちく)の五孔であり五音階が基本になっているという“五”でもある。音楽的な工夫としては一尺三寸(高E管)二尺五寸(G管)三尺(低E管)の3管を使った五重奏になっている点。曲の全体にロングリバーブが効いているのは録音場所が近所の山の中にあるトンネル内で録ったため。耳を澄ますと道脇の溝を流れていた水の音も聴こえてくる。
自然の素材の音の組み合わせが、とても心地よいです。「都市と自然」というSIAFのテーマの「自然」をよく表していますね。「都市」という視点が、少し欠けていたかもしれません。
法(ほっ)竹(ちく)と呼ばれる原始的な尺八は真竹を使った五孔の縦笛。地元の山から竹を掘って来て自作します。楽器と言うにはあまりに素朴で不完全。でもその素朴で不完全部分が竹の個性であり人間側が合わせに行く妙味がある。