視察報告-参加アーティスト・梅⽥哲也
こんにちは、SIAF2017 コーディネーターの斎藤です。「まちなか」や「芸術の森」で展示を行うアーティストのサポートを主に行っています。札幌在住3年目です。
通常の展覧会では、作家は一度下見に訪れて、あとは展示の直前にやってきて作品をインストール(設置)するケースがほとんどです。今回のSIAFでは、数名のアーティストが長期(複数回)に渡って札幌を訪れ、北海道内や札幌でリサーチを行い作品を制作しています。私の仕事はそのリサーチや制作がスムーズにいくように交渉したり、スケジュールを組んだり、アーティストの構想をヒアリングしながら、実現するにはどうしたらよいかを、時には一緒に話し合ったりすることです。このブログではそんな私たち裏方の視点を通して、彼らの制作過程をみなさんにお伝えできればと思っています。
11⽉半ば、参加アーティストの梅⽥哲也さんが視察に訪れました。ゲストディレクターの⼤友さんから梅⽥さんへのリクエストは、札幌に⻑期的に関わって作品を作って欲しいということ。海外での展⽰や公演で活躍中の梅⽥さん、合間をぬって今年3回⽬の来札です。今回の訪問先ひとつめは、東区にあるガソリンスタンド。廃業したガソリンスタンドの許可を得て、作品に使う素材を頂きました。今年は11⽉の初めに雪が降り、例年にない寒さの札幌ですが、セイコーマートのおにぎりでエネルギーを補給して作業に取り組みました。 来札のたびにいろいろな場所へ出かけては、こつこつと素材を集めているようです。
この日の午後は、札幌から⾞で1時間半ほどの場所にある、⼣張シューパロダム、通称シューパロ湖を訪れました。50年もの間使われていた⼤⼣張ダムを沈めて、平成26 年度に完成したそうです。湖の中に沈みながら続いていく道路、静かな⽔⾯に⽣える⽩樺など、映画の中に迷い込んだような景⾊が広がっています。 道内あちこちの湖をリサーチしている梅田さんですが、⻘みがかった乳⽩⾊のシューパロ湖をみて「もう少し透明度があるといい」とのこと。いったい何を企んでいるのでしょうか?
2⽇⽬は南区にある⽯⼭エリアや、市内にある札幌軟⽯の建物をリサーチしました。
約4万年前、現在の⽀笏湖のあたりで⼤噴⽕が起きたそうです。その時流れ出した溶岩が固まってできたのが札幌軟石です。軽くて丈夫な⽯質のため、150年ほど前、札幌の街を作るときに現在の⽯⼭通りを⾺⾞で運搬し、蔵や公共施設を建てるために使われました。札幌市内を歩いて、斜めに削った跡のある⽯造りの建物を見かけたら、それが札幌軟石です。
今では御影石やコンクリートがその代わりを果たしているそうですが、札幌市内で現在も唯一軟石を切り出している採掘現場などを見学させて頂きました。切り立った崖、積み上げられた石の山。そして案内してくださった石材屋さんの、温和で親切なお人柄(写真左)。印象深い視察になりました。
次回は真冬の北海道で撮影を予定している梅田さん。着々と準備を進めているようです。
不定期にお伝えするこのレポート。視察や制作の過程を垣間見ることで、最後に発表される作品をより理解し、楽しんで頂くことに繋がれば嬉しいです。どうぞお楽しみに!
コーディネーター 斎藤