イベントレポート
2019.03.01

SIAF2020ディレクターズトーク第2弾を開催しました!

2月3日(日)にアグニエシュカ・クビツカ=ジェドシェツカ ディレクター(メディアアート担当)と2人のゲスト(SIAFラボプロジェクトディレクターの小町谷 圭さん、研究者の馬 定延さん)を迎え、ディレクターズトーク第2弾を開催しました。

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この日は定員を大幅に超える、116名の方にお越しいただき、立見がでるほどの盛況でした。

「とっておきのメディアアート大集合!」と題して、メディアアートを鑑賞する上で注目してほしいキーワードとともに、登壇者それぞれがおすすめするメディアアート作品を紹介していただきましたので、ここではその一部をお伝えします。


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まず、小町谷さんからは、メディアアートにいずれかもしくは複数が含まれる要素として、7つのキーワードが紹介されました。

<キーワード>
・Transfer target to another something / 対象を別の何かに移し替える
・From material to media / マテリアル(素材)からメディアへ
・Conscious with media / メディアに意識的
・Critical to the media / メディアに対し批判的
・Explore media conditions / メディアの状態を探る
・Creak on the media / メディアの亀裂
・Effectiveness / 有効性

また、キーワードに合わせて7つの作品の紹介がありましたが、ここでは、「メディアの状態を探る」というキーワードで、紹介された藤幡正樹さんの«生け捕られた速度»をご紹介します。

Impressing Velocity, by Masaki Fujihata from walkingtools on Vimeo.

これは、GPSのシステムを背負い富士山を登り降りした際に取得したデータを用いて作られた作品です。移動速度に応じて傾斜をかけることで身体にかかる負荷を考慮して生成されたイメージとなっています。一般的にはカーナビゲーションシステムに活用される仕組みを3Dのモデリングに使用したこと、そして北斎が描いた富士山や愛好家による写真を参照しながらコンピュータによって生成されたこのイメージが、絵画や写真とも異なる性質の表現となっていることを示した作品であるとお話されていました。


2019020381_takuma(左:アグニエシュカ・クビツカ=ジェドシェツカ、右:馬定延)

次に馬さんからは、自身がメディアアートの定義について悩まされたこともある経緯から、「誰が何をするか」ということに着目を当てて、動詞としての6つキーワードが紹介されました。

<キーワード>
・communicate / コミュニケーションする
・collaborate / 協働する
・update / アップデートする
・observe / 観察する
・reflect / 内省する
・socially engage / 社会に関与する

ここでは馬さんが紹介された7つの作品・プロジェクトの中から、メディアアートの父と呼ばれるナムジュン・パイクの作品を紹介します。

この作品対して、馬さんは以下の通り説明をしてくれました。

インターネット以前、テレビの影響力が非常に大きかった時代に作られた実験的なテレビ番組です。途中でパイクの声が聞こえてきます。「つまらない」「ネタ切れしちゃった、じゃ、もう一回やろう」

これは放送事故でしょうか?


さらに、「これは参加するテレビです」という案内の後、指示が流れます。
「テレビの電源を切ってください」

本来なら、テレビが絶対に言ってはいけないことですよね。パイクは、視聴者がテレビに流れる情報をそのまま受け取る立場ではない事実に気づかせてくれています。そうすることによって、視聴者が能動的に「参加」することができる、双方向のコミュニケーション・メディアとしてのテレビの可能性を提示しています。


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最後にジェドシェツカ ディレクターからは10個キーワードと作品が紹介されました。

<キーワード>
・contemplating technology with critical distance / 批評的な観点からのテクノロジーの熟考
・experiments with space & time / 空間と時間の実験
・closed circuit / 閉じた回路
・surveillance / 監視
・incorporating classic art forms / 古典的芸術形式の取り入れ
・experimental cinema and video technology / 実験映画とビデオテクノロジー
・electricity - body - performance / 電気を使ったボディパフォーマンス
・hybrid body enhanced with technology / テクノロジーで拡張されたハイブリッドボディ
・do it yourself and site - specific / DIYとサイトスペシフィック(場所性)
・browser - based & immaterial / ブラウザベースと実態がないこと

ここでは「incorporating classic art forms / 古典的芸術形式の取り入れ」というキーワードともに紹介された、久保田成子さんの«デュシャンピアナ:階段を下りる裸体»の映像を紹介します。

WIDOK 4: Shigeko Kubota / Duchampiana: Nude Descending a Staircase from WRO Art Center on Vimeo.

これはマルセル・デュシャンの«階段を下りる裸体»という油彩画をオマージュしたものです。デュシャンは階段を下りる動きと時間の経過をキャンバスの上で表現しましたが、この作品では箱を組み合わせて階段を作り、その中にテレビを組み込み階段を下りる裸体の映像を投影することで、ビデオ彫刻として表現したものです。

ジェドシェツカ ディレクターは古典的な表現を新しい表現で再度表現しなおすことができるというのが、メディアアートの面白い要素のひとつであるとお話されていました。

参加者からは、「メディアアートが時間・場所・環境によって、様々に姿を変えてきたことが分かった」「さまざまな角度からメディアアートに知ることができた」という感想をいただきました。

今回はメディアアートの面白さと多様さをダイレクトに感じることのできるトークイベントとなったと思います。
それと同時に、日々変化する技術を作品に取り入れ、多様な形で表現されるメディアアートの懐の深さといったものを感じていただけたのではないでしょうか。

SIAFでは今後も、多くの方々に現代アートやメディアアートに興味を持ってもらえるよう、さまざまなイベントを開催していきますので、どうぞご期待ください。

イベントで紹介されたアーティスト・作品等のリストはこちら→【PDF/463KB】

写真:詫間 のり子

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