イサム・ノグチになれたかな?ワークショップ「モエレ・デ・アソボ」開催!
イベントレポート
2021.01.29

イサム・ノグチになれたかな?ワークショップ「モエレ・デ・アソボ」開催!

中止になったSIAF2020を今できる限りの方法で公開している「札幌国際芸術祭2020 特別編」、オンラインコンテンツを中心に2月14日まで絶賛?実施中です。

特別編のプログラムのひとつに「アートメディエーションプログラム」があります。SIAF2020では、芸術祭と多様な鑑賞者をより良い形でつなぐ試みとして「アートメディエーション」を取り入れました。これはさまざまな実践と活動を通じて、作品や展覧会をきっかけとした対話やつながりを生み出そうとする取り組みです。
SIAF2020の中止に伴い、特別編では子どもから大人まで楽しめる4つのプログラムを準備しました。今回ご紹介するのは、1月24日(日)に実施したワークショップ「モエレ・デ・アソボ」。SIAFとしてもちろん初めての試み、新たな挑戦です。
会場は彫刻家イサム・ノグチがデザインした「モエレ沼公園(東区モエレ沼公園1-1)」のガラスのピラミッド。感染症対策をしっかり講じて開催したこのワークショップには、ご家族4組14名(大人7名・子ども7名)が参加しました。

今回のイベント、企画したのはSIAF2020キュレーターのアートメディエーションを担当するマグダレナ・クレイスさん(ポーランド在住)。会場に用意された木製のおもちゃは、複数の突起が付いた3つのボードと、モエレ沼公園に設置されている「ガラスのピラミッド」などの構造物や遊具をイメージしてデザインされ、ボードの突起に差し込むことができる33のブロックで構成された、その名も今回のワークショップと同じ「モエレ・デ・アソボ」。ボードをモエレ沼公園のフィールドに見立て、ブロックを自由に配置すれば自分だけのモエレ沼公園が完成!というもの。イサム・ノグチは宇宙から公園がどのように見えるか、という視点でモエレ沼公園をデザインしたそうなので、これを使って遊べば、あなたもイサム・ノグチになれる!かも?

撮影:詫間のり子

このおもちゃ、デザインしたのはポーランド在住のパヴェル・ミルドネルさん、そして制作は市内の障がい者就労支援施設「地域活動支援センター 一歩本舗」さんです。海外から送られてくるデザインを基に、これまでに制作したことのない木のおもちゃを作るのは大変なご苦労だったようですが、木の手ざわり、あたたかさが伝わる、とてもかわいいものができあがりました!
一歩本舗さんのFacebookでは制作の過程が紹介されています。

ワークショップの最初は、モエレ沼公園の紹介。この下にたくさんのごみが埋まっていることや、災害に対応するために作られた公園であること、そしてイサム・ノグチがモエレ沼公園に託した思いなどをSIAF2020キュレーターでモエレ沼公園の学芸員でもある宮井さんが解説。参加した子どもからはさっそく「知らなかった!」という声が聞かれました。続いて、まだ朝6時のポーランドとオンラインでつなげて、マグダレナさんが登場。「アートメディエーション」についての説明がありました。

撮影:詫間のり子

その後、交代しながら、「モエレ・デ・アソボ」に取り組みました。

ボードに向き合う家族に示された最初のテーマは「顔」。タブレット端末を通じて、マグダレナさんが「ルールはありません。自由な発想で」。会場にいるかのように語り掛けます。
泣き顔、笑い顔、怒った顔。「ブロックを差し込むだけでなく、ボード上の好きなところ、何ならボードの外に置いてもかまわない」とマグダレナさんがアドバイスする前に、子供たちの創造力はボードという枠をすっかり超えていました。

撮影:詫間のり子

次は「動物」、続いて「植物」。ボードの面にも、突起にも、もちろんブロックの種類にも限りがあります。しかし、参加者が描くイメージと、実際に作り出される「かたち」に限りはありません。また、創造力・想像力は作る人にも必要ですが、何を作ったのかを当てる側にも求められ「泣いている顔?」「ここが木の幹!」「かわいい!」など、家族間はもちろん、企画者、スタッフも加わった自然な言葉の交換と思いの共有が促されていきます。

撮影:詫間のり子

また、参加者にはワークブック「うんとね from さっぽろ」が配られました。これも「アートメディエーションプログラム」の一つで、札幌市内の「根/roots」と「雲/clouds」にちなんだ場所を、SIAF2020の公式キャラクター「うんとね」と一緒にめぐる、という内容になっています。雲のような不思議な形の定規を作り、いろいろな線や絵を描き込めるのも特徴の一つです。

参加者は、ワークブックに思い思いの線を描いていきます。みるみるうちに各ページに「生命」が吹き込まれ、既に描かれているイラストといっしょに動き出すかのようです。

撮影:詫間のり子

1時間半という時間は瞬く間に過ぎ、ワークショップは無事終了。「コロナ禍」の中参加人数を最低限にせざるを得ず、また換気や消毒など、参加されたみなさんにもご協力いただきました。
一方、アンケートでは「また参加したい」といったご意見を多くいただき、参加したお子さんから「木のおもちゃがかわいくてとても楽しかった。イサム・ノグチさんのように公園をつくってみたいと思いました」という感想も聞かれるなど、鑑賞者と作品をつなぐ「アートメディエーション」の考え方を、札幌のまちに根付かせていく一歩となったように感じます。

 

まだまだ続く特別編、2月5日(金)から会期末の14日(日)までは、SIAF2020で予定していたに企画を紹介する展示「SIAF2020ドキュメント」を開催します!(札幌の「除雪」をアートに変えるプロジェクトを紹介する「さっぽろウインターチエンジ2021」も同時開催)
皆さまどうぞお楽しみに!

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