きる・はる・つなぐ・つみあげる 体験記
イベントレポート
2019.12.10

きる・はる・つなぐ・つみあげる 体験記

現代アートのシーンで活躍するプシェミスワフ・ヤシャルスキ(愛称シェモ)さんとライナー・プロハスカさんをお招きし、「紙」と「ラチェット」を使って作品制作を体験する5日間のワークショップを札幌市役所ロビーで実施しました。

ワークショップには、当日飛び入りの参加者も多数。実際に手を動かすことで、アーティストならではの視点や発想に驚いていました。例えば、シェモさんの「紙」を使ったワークショップでは、市役所ロビー床の三角形のタイルをモチーフに、三角柱を制作しました。参加された方の中には、「今まで何度も訪れたことのあるロビーなのに全く床の模様に気づかなかった」と話される方もいらっしゃいました。

またライナーさんの「ラチェット」を使ったワークショップに参加された方は、角材をベルトで組み合わせて作られた作品がとても頑丈なことに驚いていました。
きって、はって、つないで、つみあげて、いよいよ作品の完成です。ジャーン!

シェモさんの紙で制作した椅子やオブジェとライナーさんの木材とラチェットで、紅茶を飲むための茶室を作りました。今回のワークショップで、初めてお互いが使用する素材を組み合わせた作品が出来上がったと話されていました。

最終日には、お二人のこれまでの作品や「ナンセンステクノロジー」という考え方ついて、アーティストトークが行われました。テクノロジーの進歩により、ただ操作するだけの考えない世界になっているのではないかという問いや、電力問題に対してユニークなアプローチで向き合っていることなどが、SIAF2020のコミュニケーションディレクターの田村かのこディレクターの通訳を通して語られ、お二人の作品制作に対する姿勢など知る機会となりました。

そして、トークの後には、茶室で、ライナーさんによる「ティーセレモニー」が行われ、ライナーさんのお気に入りの紅茶が参加者に振る舞われました。

今回のワークショップでは、参加者の方々がスムーズにワークショップに参加できるために、ワークショップリーダーと通訳サポーターのみなさんが活躍してくれました。そんなみなさんからの感想をいただきましたのでご紹介します。

 

<ワークショップリーダー&通訳サポーター体験記>

● 中川さん

 アーティストお二人のフレンドリーなお人柄含め、誰もが幼少期から自然に体験して来たであろう「切る・貼る・積む」といった「ものづくりの原点」ともいえる作業を自分自身も無心になって純粋に楽しめました。ちょっと難しい、と思われがちなアート。少し言葉をかけるだけで意識や関心をを持って頂けたように思いました。実際に、シェモさんのワークショップに参加され、三角柱を1本作られた方が、「私が作ったの!」と友人を連れて再度訪れ、楽しそうに説明されている方が複数いらっしゃったのがとても印象に残りました。

● 花田さん

 制作期間中は主にシェモさんのサポートを担っていました。シェモさんの活動の根底にはテクノロジーの発達があり、「それは人々に利便性をもたらす反面、そこにある問題をより複雑化させ、人間から“考える”という行為を奪う危険性も孕む」と語っていたのが印象に残ります。今回の作品は紙やボンドといった日常的に身近な素材を組み合わせて制作されています。これは、「Of Roots and Clouds: ここで生きようとする」というSIAF2020のテーマでも示されているように、自分が日々生きている環境や社会と向き合い、そこにどんな課題や可能性が潜んでいるのかを考える機会となったように感じます。

(左写真真ん中:中川さん / 右写真一番右:花田さん)

● 宇佐さん(SIAFラボ研究員)
 現代アーティストと共に一から作品を制作した今回のワークショップではワークショップリーダーでありながらとても楽しい期間を過ごさせていただきました。海外の現代アーティストの方と一緒に作業をすることで普段では知りえない技術だったり文化だったりを知れたのはいい経験でした。ワークショップにはアートに興味がある方はもちろん、普段、アートとは関わり合う機会がない方々も参加され、これを機にSIAFに関心を持って頂けたのではないかと感じています。

● 川村さん(SIAF部)

 アーティストの方と一緒に作品をつくったのは初めての経験でしたが、自分の手を使って作品づくりに携わり、そして完成したイスに座ってみたり、茶室でお茶を飲んでみたりと頭で考えるだけでなく「実際に体で」経験したことは今までになく楽しい感覚でした。出来上がった作品自体もとても素晴らしいものだと思いますが、完成に至るまでの色々な方々との出会い、お話しした内容、試行錯誤の経緯などが、どれをとっても一期一会のもので、とても心に残っています。 SIAF2020でも、こういった機会があればと思うのと同時に、もっといろいろな方にも経験していただければ、とても有意義なことだと感じます。

● 五十嵐さん(SIAF部)

 今回のワークショップでは、参加者とアーティストの協働が成す制作過程が印象深かったです。。アーティスト2人の思索と参加者の発想が交差して、発生するいくつかの予測不可能な状況は、私が通訳サポーターとして参加したこととも関係して、何より楽しんだ点の一つでした。というのも、アーティストはおおまかに何を作るかを参加者に伝えるだけで、具体的に何をどう作るかは参加者同士または参加者とアーティストが相談し決定していきました。ここで各々が頭の中の想像図を伝えあうときは、いつも言葉でした。アーティストと参加者の両者に最も近い「会話」のサポートができ、活気に触れる機会を持てたことは喜ばしい経験でした。

(左写真右:宇佐さん / 右写真左から2番目:川村さん)

(左写左:五十嵐さん / スタッフで協力する様子)

ワークショップへのご参加ありがとうございました。今後もSIAF2020の開幕までプレイベントをお見逃しなく。
早速ですが、次回のプレイベントのお知らせです!

2019年12月15日(日) に北海道立近代美術館にて開催中の「アイヌの美しき手仕事 柳宗悦と芹沢銈介のコレクションから」をSIAF2020アイヌ文化コーディネーターのマユンキキさんと一緒に鑑賞するギャラリーツアーとトークイベントを行います!

詳しくはこちらをご覧ください。

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