エキシビション
高田 洋三
高田洋三の作品は現実の風景写真でありながら絵画的であり、ドキュメンタリーな手法でありながら不思議と現実とは思えない。例えば近代化の波で空洞化した街や施設を覆う植物の生命力をありのままに写した作品は、太古の光景なのか、あるいは映画にみる近未来のフィクションな光景なのか判然としない。
作品は、写真装置によって、現実の世界に含まれる虚構性を増幅させ、虚構の世界を複製するという同語反復的なプロセスにより、ナンセンスと、現実の側面が醸しだす哀しさが共存する世界をつくりだしている。その景観の特異性をもって、日常の外にある世界へ想像力を広げるように促しながら、同時にその世界に住む人々の普遍的な生活や、彼ら/彼女らの生活を規定する風土的、社会的な側面について、静かに焦点をあてているのだ。作品は単なる風変わりな景観にとどまるだけでなく、人と自然、人と社会の関係の考察へと広い射程をもったものになる。
主な展覧会として「Tokyo International photo competition 」(72 Gallery/東京 & United photo Industries Gallery/NY、2013)、「Spheres」(Joseph Gross Gallery, Arizona、2009)、「CET 06」(White House、東京、2006)、「都心に住む」(Guardian Garden、東京、2005)、「Artists by Artists」(六本木ヒルズ、2003)、「写真 2003」(茨城県つくば美術館)などがある。2008年から2009年まで文化庁新進芸術家海外留学制度を受けアメリカに滞在している。
今回は、「都市と自然」をテーマに北海道、札幌のどこででもあり、どこでもない光景やアメリカ滞在中に出会った風景を、大型印画紙で表現する。
http://www.sheepphoto.com/
〈参考作品〉
《Proto Landscape》2013