エキシビション
岡部 昌生
都市に内在する不可視の記憶や歴史の痕跡を写し取るため、岡部は1977年よりフロッタージュ(擦り出し)という手法を用いて表現を始める。1979年にはパリのイヴリ・シュルセーヌに滞在し、169点から成る《都市の皮膚》を制作。1980年代後半より広島の原爆の痕跡を作品化するプロジェクトを開始し、2007年のヴェネチア・ビエンナーレにおいて結実化。その直接的かつ身体的な実践に対して世界的な評価を受けた後、現在も継続的に広島や福島といった都市に関わり続けている。1988年、オーストラリアのヌーサで市民と150mに及ぶ街路のフロッタージュを行って以来、人々とのコラボレーションやワークショップも積極的に実施するほか、国内外の各都市で制作・展覧会活動を展開している。主な展覧会やプロジェクトは「ART for the SPIRIT永遠へのまなざし」(北海道立近代美術館、2001)、「シンクロニシティ同時生起」(広島市現代美術館、2005)、第52回ヴェネチア・ビエンナーレ美術展日本館「わたしたちの過去に、未来はあるのか」(2007)、「タスマニアのヒロシマ」(MONAタスマニア、2011)、「南相馬の記憶と記録」(南相馬市、2013)など多数。
SIAF2014では、北海道立近代美術館に《YUBARI MATRIX 1998-2014》を展示。床に敷き詰めたドローイングの全面を強化ガラスで覆い、その上を来場者が歩いて鑑賞する展示を試みる。鑑賞者は作品の上を歩くことによって岡部の制作を追体験すると同時に、炭鉱の遺構を身体的に経験することで、私たちの現代の暮らしを支える近代以降のエネルギーの変遷と都市化の歴史に思いを馳せることとなる。
床面:《北海道炭鑛汽船真谷地炭鑛電力所遺構》1998
壁面:《雄別炭礦病院屋上遺構》2009
「岡部昌生フロッタージュ・プロジェクト雄別炭礦を掘る」展での展示風景(釧路市立美術館 2009)
Photo: 港千尋