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調査員:わたなべひろみ

 

景観色にひそむ食べもののあれこれ


札幌の景観色70色の名称には食べものにまつわるものも多い。
馬鈴薯、生チョコ、小豆…そして、キャベツ、札幌玉葱。

北海道開拓の時代から、農業は大事な柱だった。今となっては、大都市として発達し、住宅のひしめく札幌の街。しかし、昔から栽培されている、札幌と名のつく野菜がある。それらをJAさっぽろが「札幌伝統野菜」として普及を図っている。「札幌黄(玉ねぎ)」「札幌大球(キャベツ)」「札幌大長ナンバン」「サッポロミドリ(枝豆)」「札幌白ごぼう」の5品種。景観色の名称になっている野菜が2品種含まれている。

今回は、幻の玉ねぎと言われ、熱烈なファンも多い「札幌黄(玉ねぎ)」を取り上げることにした。

 

札幌黄との出会いが生んだ絶品カリー


市電沿い、中島公園にほど近いカリーハウスパークポイント。
マスターの高瀬昭則さんにとって、札幌黄との出会いが大きな転機となった。
子どもの頃から、カレーを作るのは高瀬さんの役目だったそう。
子どもながらに、炒めるのがいいのか、ゴトゴトと煮込むのがいいのか…考え考えカレーを仕込んでいたという。
高校卒業後は東京の調理師学校で学び、以来ずっと調理師一筋。
27歳のとき、札幌に戻り、31歳で大通で洋食店であるパークポイントを開店する。29年間洋食を作り続けるその間にも、もちろんカレーも作ってきた。

高瀬さんも噂にはきいていた札幌黄。
知り合いからあらためて紹介されて、使ってみたらあまりの味の違いに衝撃を受ける。
私たちも札幌黄ペーストの味見をさせていただいた。全く玉ねぎ臭さがない。驚くほど甘い!!知らずに口にしたら、何か果物??と思うだろう。
糖度は27度もあるそうだ。

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6年半前の高瀬さんは、もうこれしかない!とすっかりはまってしまった。
現在の場所に店を移し、カリー専門店として札幌黄を活かしていく道を選んだ。

パークポイントのカリーは3つの種類にわけられる。
さっぱりとしたスープカリー。トマトがさわやかなヨーロピアンカリー。そして、札幌黄の甘味が最大限に効いたインドカリー。

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すべてのカリーに添加物はなし。札幌黄の甘味を軸にして、ニンニク、ショウガ、スパイスと、別に用意するスープとを合わせて作る。

中でも、シーフードのインドカリーはマスターの一押し!
シーフードの旨味が札幌黄と野菜のベースとバランスよく組合わされて、更にまろやかになる。ここまでの味の調和があらわれるのにはもうひとつ秘密があった。

「昆布だしを使っているんですよ」

マスターのご出身は様似町。そちらから、たくさんの昆布が送られくるとのこと。以前は、鶏ガラを使っていた時期もあったそうだが、昆布を使うようになってから、特にシーフードカリーはぐんと味が抜きんでた。

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期間限定のエゾシカのカリーも肉がやわらか、お肉食べてる!感が強い深いコクが良かった。オムレツのヨーロピアンカリーは黄色いオムレツはフワッフワ。さすがに長年のキャリアのある洋食のプロの技だ。トマト味が見え隠れするカリーにはパスタも合うに違いない。

 

ビジュアルの魅力にもノックアウト


パークポイントのカリーの命とも言うべき、札幌黄のペースト。濃い飴色のペーストをここまでのものにするために、丸一日炒め続ける。油は一切使わない。
この甘さが強みであるのと同時に、カリーとしての味を定めるときの、ネックになることもある。甘すぎないように、ちょうどよい按配にするのがマスターの腕の見せ所なのだ。

札幌黄が幻の玉ねぎと呼ばれるようになったのには、生産量が激減してしまったことにある。
クラーク博士の後任として、札幌農学校に着任したブルックス博士が持ち込んだと考えられる「イエロー・グローブ・ダンバース」。これが札幌黄の原種と言われている。現在の札幌市東区南西部にあたる、札幌村が玉ねぎ栽培の発祥の地となった。ここから次第に栽培が拡大していく。しかし、札幌の人口が増えるにつれ、玉ねぎ畑はどんどん宅地となっていった。更に、収量が多く病気に強い品種が導入されていくことも重なり、札幌黄の生産量は激減する。札幌が玉ねぎの一大産地であったことさえも知っている人は少ないだろう。

何軒かの農家が、幻のまま絶やしてはいけない、と細々と作り続けた札幌黄。その収量は、少しずつではあるが、増えてきている。
そして、高瀬さんのように、その魅力に気づき、惚れ込んだ人たちによって新たに広められようとしている。
増えてきている…とは言え、生産する農家は少なく、在来種特有の育てにくさもあるため、まだ生産量が十分とはいえない。それは、通常の玉ねぎと比べると10キロ当たり400円から500円も高い価格にも顕れる。
クリアしなければならない課題も多いが、それに余りあるほどの良さがあるのも確か。

「ホントに綺麗なんですよ」

高瀬さんがより熱を入れて語りだす。

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「真っ白な玉ねぎがポンポン出来るらしいの。その姿のきれいなこと。1枚皮を剥いたら、白にグリーンがくっきりしてるのね。もう見とれちゃう。あとそこに赤いのが入ってきたり…」

話が止まらない。玉ねぎについて話しているとは思えないほどの語り口だ。
幻の玉ねぎは、ビジュアルだけでも十二分に甘いのだった。

 

 

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カリーハウスパークポイント
http://www12.plala.or.jp/parkpoint/

 

【参考文献・資料】

札幌黄物語 ~幻の玉ねぎの今を伝える~  発行:札幌市東区役所地域振興課